事業者向け融資は、以下の通り、いくつかの分類方法があります。

一、形式による分類

二、貸し手による分類

三、担保の有無による分類

四、保証の有無による分類

この記事では、その分類方法について解説します。

 

一、形式による分類

融資はその形式により、大きく以下の4種類に分けることができます。

①証書貸付(「しょうしょかしつけ」略して「しょうがし」)
②手形貸付(「てがたかしつけ」略して「てがし」)
③手形割引(「てがたわりびき」略して「わりびき」)
④当座貸越(「とうざかしこし」略して「とうがし」)

これらは利用される場面、金額の大小、返済の期間や方法などが大きく異なります。それぞれの特徴を見ていきましょう。

 

①証書貸付

数百万から数千万~数億まで、皆さんが銀行や日本政策金融公庫(国金)から受ける融資の大半はこの証書貸付に該当します。

融資を受ける際、金融機関に「金銭消費貸借契約証書」という書類を提出することからこの名前が付きました。

 

返済期間が1年超の場合に証書貸付が利用されますが、一般的には5年から10年、長ければ20年や30年という返済期間も見られます。

事業者向け融資ではありませんが、住宅ローンも広い意味ではこの証書貸付に含まれます。

 

②手形貸付

上記の証書貸付が返済期間1年を超える融資に利用されるのに対して、手形貸付は一般的に1年以内の融資に利用されます。

現実には数日や数週間といった非常に短い期間で貸出されることも珍しくありません。

手形貸付は、既に金融機関と十分な取引実績がある会社が、短期的な資金需要(月末の決済、納税や賞与資金など)を満たすために利用されるケースが多く、新規取引先に対して手形貸付が行われることはあまりありません。

 

証書貸付は金銭消費貸借契約証書を銀行に提出しますが、手形貸付は借入金額を記載した約束手形に会社印を捺印して金融機関に差し入れます。
この場合の手形を通称「単名手形(たんめいてがた)」と呼びます

手形用紙は金融機関が用意するものを使いますので、当座預金を開設していなくても手形貸付を受けることは可能です。

手形貸付を利用している会社は、概ね資金繰りに余裕がなく、繰り返しこの手形貸付で銀行から資金を調達します。
このような状態は 「ジャンプ」 「書き換え」 「更新」 「繰り回し」 等の呼び方があります。

(若干ニュアンスは異なりますが、だいたい同じようなものです)。

ちなみに、約束手形は金銭消費貸借契約証書に比べると、貼付しなければならない収入印紙の金額が低いので、ささやかですが数千円ほど節約になります。

 

③手形割引

得意先から売上代金を手形で受け取った場合、その手形を金融機関に持ち込んで支払期日より前に現金に代えてもらう資金調達方法です。

一般的な「融資」のイメージからはちょっと外れるかもしれませんが、これも立派な融資の一形態なのです。

 

しかし、手形割引は証書貸付や手形貸付に比べると非常に個性的で、独特の注意点が数多くあります。

手形割引については別途記事を作成して、そちらで詳しく解説させていただきます。

 

④当座貸越

一定の金額(「極度額」と言います)まで、いつでも自由に借りることが可能、返済もいつでもOKという融資形式です。

もっともイメージしやすいのはカードローンでしょう。カードローンも当座貸越の一種です。

消費者だけではなく事業者向けにも、極度額が数十万円から数千万円まで、さまざまな種類のカードローンが提供されています。

 

昔は当座預金を開設している事業者が、一時的な残高不足に対応するため利用するものでしたが、機動的な借入と返済が可能で無駄な金利を節約できることから、徐々に広く使われるようになりました。

但し、事業者向けで極度額100万円を超えるようものは、ほとんどが担保や保証協会保証を要求されます。

ところで、会社の業況が悪化して資金繰りが厳しくなると、当座貸越を極度額いっぱいまで借りて元金の返済が行われず(利息だけ引き落とし)、貸越残高が極度額近くに張りついたままの状態になります。
このような状態を俗に「固定化」と呼びますが、こうなると不良債権予備軍ですから金融機関は警戒を強めることになります。